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October 13, 2004

大人のためのえろドリル

という本が出ていて、しかも結構売れているらしい。

実はあたしは企画段階ではこの本の著者の一人であった。が、途中でボツ食らってその原稿のほとんどが採用されず、残ったのは「吉原ってナニ区にあるの?」(これは裏表紙にサンプルとして乗った)とか、「オナニーの起源」とか「エカチェリーナ2世は汚い男が好きだった」とかのネタぐらいだ。

なんでボツになったのかというと、あまりに読者に「事前知識」を要求し過ぎているように見えるから、というのがその理由だった。いわゆる「マニア受け」狙いに見えたらしい。

実際、最初に持ってこられた時のタイトルは「えろドリル」ではなく「えろ模試」だった。実はあたしゃかつて某予備校(全国規模)で数年模試作っていた経験があるので、こういうのは得意だから任せなさい!と言って引き受けたのだが、結局「模試」テイストを押し出し過ぎ、「ドリル」になってなかったからボツになったのだ、と理解していた。

一応サンプルとして、「倫理」の一部の原稿をここで公開してしまおう。

問1 ジークムント・フロイトになったつもりで、以下の人物たちの相談に対し、適切だと思われる回答を選びなさい。

相談者1:わたしは比較的裕福な家に生まれ、不自由なく育ったのですが、ある日「人に奉仕しなさい」という神の声を聞きました。それ以来わたしはどうすれば人に奉仕することができるか、ということをずっと考えるようになりました。幸いわたしは父からかなり高度な教育を受けていたため、具体的に社会でどのようにすれば「人に奉仕した」となるか自分で探すことができました。その結果、病院で病人や怪我人の世話をすることこそ、神の声に答えることなのではないか、と思ったのです。わたしはその後、クリミア半島で繰り広げられていた悲惨な戦争の現場に赴き、敵味方の別なく負傷者を看護しましたが、これは果たして「神の声」に答えたことになるのでしょうか?

A:神の声に応えることができないのなら、悪魔の声に応えればよろしいのではなくて?

B:英国国民は、あなたがあなたの義務を果たすことを期待しています。ですから、神もたぶんあなたがあなたの義務を果たすことを期待しているでしょう。ハーディ君、キスしてくれ。

C:それはあなたの精神が幼児期に抑圧された結果生じた男根願望の変形でしょう。あなたは自分にペニスがないということにコンプレックスを抱き、自分にないペニスの象徴として「神の声」という存在を作り上げたのです。しかし同時に現実にペニスを備えた男性に近づくことがはばかられるため、自分自身を病院という正常な機能を持った男性のほとんど存在しないような場所に置くように仕向けたのです。また、戦場に出かけて行った、ということも、やはりペニスへの羨望とそれを得られない現実との葛藤に悩み、不完全なペニスのみが存在する場所を求めていった結果だと思われます。要するに、一発やれば治ります。

D:そんなことより聞いてくれよ、こないだクリミア戦争行ったんですよ、クリミア戦争。そしたら何か怪我人がめちゃくちゃ一杯で看護しきれないんです。(中略)もうね、アホかと、馬鹿かと。(中略)まあお前、白衣の天使はメリット勲章でも授与されてなさいってこった。

(以下数問続いて…)

問2:上記の設問すべてに登場する相談者の心理を、カール・グスタフ・ユングになったつもりで分析しなさい。


一部に直接引用があるが、念頭においているのは「モンティパイソン」の笑いである。アカデミズムと笑いの融合、と言ったらこれがまずお手本になる、と考えたからだ。

で、本が出た後でネットで検索かけて感想とかみたら、「下品でバカなのにしっかり作ってあるところがいい」という意見がかなり多かったのね。「えろ模試」が「えろドリル」になったのは、「大人のドリル」に便乗するためでもあったけれど、「内容が必要以上にムズいと一般読者が引く」という配慮が働いたためだったそうだ。が、ネット上にでてきた感想をみる限り、「模試」でも「ドリル」でもどっちでもよかったんじゃないかな?と思えてきた。要するに、きちんと作り込んであるかどうかが問題だったらしい。

バカなものほど作るのにエネルギーがいるのだ、ということは、忘れてはいけないことだろう。これは自分に対してもしっかり言っておく必要がある。

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